陰として豪雨

理系浪人生の日記→理系東大生の日記

参拾捌話 はい、マイナンバーカード(URでアール)

先週の続きでごめんなさい。

政治とカネ問題で大臣を辞任した人によると「首相は任命権者だから裁量をもってよい。極めて論理的で、問題にすることが間違っている。」らしいんですけど、それなら裁量行使した事実が必要なはずで「首相は詳しく推薦名簿を見ていない」という官房長官の発言と矛盾しているのでは。この問題については、そもそも「任命権者の権限を行使したが、直接的には行使していない」と言って「論理的」に説明が破綻しているのも不満なんですが、それ以上にこの人が続けている中国がどうたらという問題に論点すり替えてるのがとてもとてもとても不快です。

政治資金パーティーさんによれば「政府は研究者個人の研究に全く制約をかけていない」「政府のシンクタンク的機能が期待されている」ので学問の自由の侵害には当たらないそうですが、「日本の国民を守る技術研究に拒絶反応」「なぜ日本の安全保障研究を拒否し」「日本を守る研究に参加しないのは理屈が通らない」などなど彼は日本の研究者の研究姿勢が気にくわないようです。第一に学術会議は「政府のシンクタンク的機能」を期待されているのであり、「研究者個人の研究」に制限をかける性質の組織ではないので、「日本を守る技術研究に参加しない」のは研究者個人単位の問題ですよね。それに、学術会議を通して「日本の国民を守る技術研究」に研究者を動員しよう(発言からはそう取れます、そうでないならば学術会議が「技術研究」に協力しなかろうが関係ないので)という意図が働けば、もはや「研究者個人の研究に全く制約をかけてない」は嘘になるのではないでしょうか。

また年金未納問題くんは、「中国科学技術協会と研究者の交流などで協力する覚書を結んでいる」「外国の防衛研究につながりかねないものに理解を示しているのか」とか言ってるのでその覚書がどんなにたいそうなものなのかと思ってHPに見に行ったんですが、単に共同ワークショップの開催や研究者交流等について協力関係を結びましょうという抽象的な内容に過ぎず、これのどこが「防衛研究につながりかねないものへの理解」になるのか全く理解できません。しかもその活動実態はないという。

だいたい科学者(の大半)がそんなものに協力するわけないってことくらい考えたらわからないんですかね。なぜ軍事研究への参加に強烈に反対しているのか。たぶんわかってて言ってはいるんでしょうけど。学術会議の設立経緯を踏まえれば、国内の軍事研究に科学者が動員されることに一貫して反対するのは組織として当然であり、そうでなくても科学者として当然だと思います。

日本は特に先の大戦の結果を反省しなければならない立場にあり、「日本の国民を守る技術研究」が本当に国民を守るようなことにつながるのかを科学者に限らず全国民が反省しなければ、一体何を教わってきたの?ってことになりますよ。

軍事研究から転用されて社会生活に資する技術が生まれる例もありますが、それは結果論であって、軍事研究からでなければそういった技術が生まれないという必要条件ではないはずです。

というか結果として国民生活に役立つ技術が生まれることは往々にあるにしても、研究者って国のために研究しているわけじゃないし、そうさせたいならそれに見合う対価を払えという感じがします。学術会議とは完全に別件(そうではないと主張する人もいますが)で中国の国家戦略の研究プロジェクトに参加した研究者がやり玉に挙げられていましたが、彼らは単に待遇が良いからそこで研究しているのであって、国内にそれに劣らない研究環境をつくれない日本の弱さがそんな状況を生み出しているのではないでしょうか。だいたい東大や京大で軍事研究はじめても中国に筒抜けだと思いますけど。

とにかく、URから金をもらった私以外私じゃないのちゃんが言っていることが本気ならば、これは看過できない挑戦だと思います。国家にではなく(ここ重要)政治家に都合の良いような研究ばかりやらせていたら、明らかに学問は死ぬんですよ。どんな研究にどんな価値があるかなんて素人にはわからないんです。たいして研究者の教育育成に力もいれてないのに勝手なこと言わないでほしいなあ。

あと軍事研究させたいならまずベクトル削除するのやめましょうね。それと行列復活させましょうね。